本ブログでは反出生主義について学べる本について紹介します。
今回は入門書や専門書等、思想を学ぶ本に絞ってご紹介します。
反出生主義とは
あなたは「反出生主義」という言葉を聞いたことがありますか?
簡単に言うと反出生主義とは、「人間が生まれてくることや、人間を生み出すことを否定する思想」1です。
上記説明だけだと「怖そう」や「危険だ」という感想を持つ人が多くいるでしょう。
しかし皆さんも「こんなつらい思いするなら生まれてこなければよかった」というような思いをしたことはあるのではないでしょうか。
危険だと感じる一方で一度は抱いたことがあるそのような思いについてのもやもやを解消してくれるであろう本を紹介します。
これらの本を読んでぜひもう一度考えてみてください。
「反出生主義」の思想について学べる本 5冊
1.ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語
充実度 | 4 |
読みやすさ | 4 |
名言:「魔王:我が人類をほろぼす使命をおっているということはわかった。だが、「なぜ」我がそんな使命をおっているのだ?」
この作品は、人類を滅ぼす宿命を背負っている魔王が「人類は滅ぼすべきか否か」を10人の人間に考えさせるストーリー。
悲観主義者、楽観主義者、共同体主義者、懐疑主義者、自由至上主義者、??主義者、相対主義者、自己主義者、教典原理主義者、反出生主義者がそれぞれ人類の存続の有無について議論を交わしていく中で、10人が出した答えとは、、、そして魔王はどのような結論を出すのかに注目できる作品です。
会話劇であると同時に専門的な用語が出てくることも少ないので、哲学的な知識が全くない初心者におすすめです。
また、登場人物は様々な立場から物事を考えているので自身の立場も明確になるのではないでしょうか。
2.現代思想11月号 特集 反出生主義を考える-「生まれてこないほうが良かった」という思想
重要度 | 4 |
読みやすさ | 3 |
名言:「生まれてこないほうが良かった」という問題設定のなかには、哲学的なパズル解きという面と自分の人生の根本に突き刺さってくる、本当に切羽詰まった実在的な問題であるという面があります」
本書は反出生主義について識者が論じる論文集です。哲学、宗教学、映画、トランスジェンダー、ロボット等様々な観点から反出生主義の輪郭及び内実を明確にしていきます。
名言で引用したのは、日本で反出生主義について研究している第一人者の森岡正博さんとハンスヨナスの研究者戸谷洋志さんと対談での発言です。
反出生主義について考えることはややもすると非常に知的なパズル解きゲームになり得てしまいます。
しかし実際に自分事として「反出生主義」について考えている人にとってはパズルゲームの様に捉えられるのは納得がいかないことです。
悩みを解決するための手段の一つとして反出生主義の研究が進むことを期待したいです。
3.生まれてこないほうが良かったのか? 生命の哲学へ!
充実度 | 5 |
読みやすさ | 3 |
名言:「誕生肯定とは、誕生否定の対義語であり、生まれてきて本当によかったと、心の底から思えることを意味している。」
本書では先ほども触れた反出生主義研究の第一人者である森岡正博さんが、反出生主義の考え方を超克する思想として誕生肯定という思想を提唱しています。また2500年前から存在する反出生主義について、文学、仏教、哲学等に触れながらその趨勢について徹底的に考察しています。専門的な哲学書でもあるため難しい用語もたくさん出てきますが反出生主義についての概観を把握するにはうってつけの本です。
4.生まれてこない方が良かった 存在してしまうことの害悪
充実度 | 5 |
読みやすさ | 2 |
名言:生まれ存在してしまうことによって、人は、生まれて存在することのなかった人に降りかかるはずのない非常に深刻な害悪を正に被っているのである。
本書は反出生主義という思想を大きく前進させた本であり、世界の様々な哲学者に多大な影響を与えています。
作者であるベネターは苦痛と快楽が存在している場合を、それらを受ける人が存在している場合(シナリオA(下図の左側))とし、苦痛と快楽が存在していない場合を、そういった人が存在していない場合(シナリオB(下図の右側))としてまとめています。
そしてその二つを比較すると、シナリオBの方がより良いつまり人が存在していない方がよいと主張します。
難しい本ですが、ベネターの主張について理解をするのと同時に反出生主義についても理解が深まります。
シナリオA、シナリオB
苦痛がある (悪い) | 苦痛がない (良い) |
快楽がある (良い) | 快楽がある (悪くはない) |
5.生誕の災厄
充実度 | 4 |
読みやすさ | 3 |
名言:生まれたという屈辱をいまだに消化しかねている。
本書は「生誕こそが災厄である」などの反出生主義的な思想を伝えるアフォリズム(簡潔な表現で思想や真理を鋭く表すこと)集です。
ページを捲るたびに名言が飛び交います。一文一文は短いですが、かみ砕かないと理解できない箇所も多々あります。
一度読んでみて自分が気に留めた箇所について考察するのもおすすめです。
まとめ
反出生主義について理解が深まる書籍を紹介しました。
反出生主義については否定的な意見が出ることが多い考え方です。
事実ベネターはメディアに対し私生活は明かさず、顔出しもしていません2。
けれども、この思想は人類が2500年前からずっと考え続けていた思想であることには違いがありません。
反出生主義に関する本を読むことと自身のこれまでの直観と経験を混ぜ合わせ、ぐるぐると思案する、、そうすることで反出生主義ひいては自身の人生観についても改めて考え直す機会になるのではないでしょうか。
気になった本や関連本はaudiobookでも聞いてみてください♪
次回は反出生主義について取り扱っている文学を紹介します。
- 生まれてこないほうが良かったのか? 生命の哲学へ! ↩︎
- https://courrier.jp/news/archives/282469/ ↩︎
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